ライフスタイルマガジン『くまもとのいえ』と連動した、熊本の家づくり情報を網羅したプラットホームです。
建築家、住宅会社の新築からリフォーム、リノベーションまでさまざまな事例をご紹介。
2021/8/9
くまもとで暮らすぜいたく
SPECIAL ARTICLE
2021/12/24
実際に小国杉で家を建てた
Iさん邸とMさん邸を訪問。住み心地はいかに。
熊本県産材で家を建てる
両親の山師の仕事を引き継ぎ、兄弟で木を切る兄の江田親治さん(右)と今朝行さん
阿蘇郡南小国町の小高い丘の上に建つのは、ご主人の実家の築年の牛小屋を改築したIさん邸。牛小屋を支えてきた大木の梁と柱の一部を残し、後は全て地元の小国杉を使って大改造を施した。
「この梁を残したくて改築に踏み切ったんです。こんな立派な松の木、今ではなかなか手に入りませんものね」と奥さん。
改築から4年経つというのに、家に入った瞬間から木の香りに包まれる。まるで森林浴でもしているかのように清々しい。「杉の床が気持ちよくって、真冬以外は素足で過ごしています(笑)。何より毎日この香りに癒やされて、子どもたちにとっても良かったと思っています」
漆喰の塗り壁や杉の端材をキューブ型に切って埋め込んだリビングのデザインウォールなどは、ご夫婦による手づくり。隣に住むご両親も加わって、漆喰の壁をぬったり、棚を作ったり、家族総出で家づくりに参加したそうだ。地元の品質の高い建材を使い、安心の暮らしを手に入れたIさん家族。これから子どもたちの成長とともに小国杉も経年変化を重ねながら、古木の梁に負けない味わいを増していくのだろう。
林業や環境保全の観点から熊本県産材を普及させようと、様々な取り組みを行っている団体・グループを紹介。その活動を通して木から選ぶ家づくりについて考える。


風土と人の手が生み出す 強くて美しい小国杉
木を傷つけないように倒れる方向を緻密に計算して伐採する
近年、コロナ禍によって木材の流通に変化が生じ、住宅業 界、消費者にも影響が出ている。さらに消費者の環境問題への意識の高まりもあって、地域材を指定して家を建てる工務店や施主も増えている。四季の変化がはっきりしている日本特有の気候風土で育った地域材は、同じ環境で建てる家の建築材として適していると言われている。また国産材を使うことは地域の山を守ることでもあり、林業の活性化にもつながる。
熊本県内には品質の高い木材が生産されているが、その中から250年の歴史を誇る「小国杉」に注目。『小国町森林組合』に小国杉の魅力について聞いた。

木目の詰まった美しい小国杉
小国町の自慢の宝を未来につなぐために地域一丸となって
阿蘇山の裾野に広がる小国町の美しい杉林は、江戸時代の植林から始まった。以来、250年もの間、人の手によって大切に受け継がれてきた町の宝だ。
「寒暖差の大きい山間高冷地に育つ小国杉はゆっくりと育つことで、 木目の詰まった比重の高い丈夫な木となります。なだらかな斜面地で育つこともあって性質も揃い、建築材としての評価が高いんです」と話すのは小国町森林組合の梅木孝浩さん。1986年には国立林業試験所の強度試験を受けて、基準値を大幅に上回る強度が証明された。さらに適正な森林管理と環境に配慮した木材の証明である『SGEC』と『SGEC–CoC』の認証も取得。持続可能な林業にも力を注ぐ。「私たちは食べ物のように、生産者からお客様の元に届くまで流通経路がはっきりとわかる木材のトレーサビリティにも取り組んでいます」。
早くから努力を重ねブランド化を確立し、未来につないでいく小国町の林業。強くて丈夫な小国杉は全国の公共施設でも多く使われ、最近では“東京オリンピック2020”の選手村の施設にも採用されている。
「国産材の自給率を高めようと国も動き出し、何より一般の皆様に地域材が徐々に見直されてきたことが嬉しいですね」。
スーパーで食材を買う時に産地を確認するように、大切な家族が暮らす家の柱がどこの産地なのか、もっと関心を持つべきかもしれない。これからは木から選ぶ家づくりが当たり前になってくるのかもしれない。
シリーズ.01
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私たち小国杉で家を建てました。
