ライフスタイルマガジン『くまもとのいえ』と連動した、熊本の家づくり情報を網羅したプラットホームです。
建築家、住宅会社の新築からリフォーム、リノベーションまでさまざまな事例をご紹介。
2021/8/9
くまもとで暮らすぜいたく
SPECIAL ARTICLE
2022/05/31
くまもとアートポリス
後世に残る文化的資産を創造する
特集

アートポリスアドバイザー
曽我部 昌史氏

アートポリスアドバイザー
末廣 香織氏

アートポリスアドバイザー
桂 英昭氏
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アートポリスコミッショナー
伊東 豊雄氏
環境デザインに対する関心を高め、都市文化並びに建築文化の向上を図るとともに、 文化の情報発信地としての熊本を目指して、優秀な建築家やデザイナーの才能・アイデアを集結し、 機能面はもとよりデザイン面にも優れた後世に残る文化的資産を創造するための 熊本県の取り組み「くまもとアートポリス」を『くまもとのいえ』が紹介する。
読者の皆さんは『くまもとアート ポリス』という熊本県の取り組みを ご存知だろうか?「名前は聞いた ことがある...」「警察署とか学校な どの公共施設を有名建築家が設計している取り組みでしょ?」と漠然 と捉えている人が大半ではないだ ろうか。
者にもわくわくする家づくりのアイデアを推進賞の作品で見い出し てもらえたら嬉しい。
全国で活躍されている伊東豊雄さんをコミッショナーに迎え、コンペや推薦によりプロジェクトの設計者を決める「プロジェクト事業」、各種のイベント、広報等を行う「企画・広報・人材育成事業」、平成7年より県内の優れた建造物の事業 主、設計者、施工者を表彰する「顕 彰事業」の3つの事業を行っている。
『くまもとのいえ』では、この取り組みを読者にも関心を持っても らいたく、顕彰事業「くまもとアー トポリス推進賞」をこれから毎年紹 介していく。県内で建てられた住 宅や、店舗、施設がエントリーされ、 推進賞、推進賞選賞が選ばれる。熊 本県は地元住宅会社が多いことで 有名だが、地元にも感性豊かな建築家、まだ知られていない施工会社 が多数あり、その方々の存在を知ってもらうことで、家づくり、店舗・ 施設を建てるときの選択肢が広がり、周囲の環境との調和や、人が集 う場所としてまちづくりにも繋が り、地方創生にも期待される。読者にもわくわくする家づくりのアイデアを推進賞の作品で見い出し てもらえたら嬉しい。

立田山憩の森・お祭り広場公衆トイレ
設計/曽根拓也+坂本達典+内村梓+前原竹二/株式会社山下設計
丸太を組んだレシプロカル構造の柔らかな環状屋根が最大の特 徴となっている。屋根の下にはトイレブースと休息スペースが連 関をもって配されており、隣接するお祭り広場とのつながりを持 たせている。

株式会社エバーフィールド木材加工場
設計/小川次郎/アトリエ・シムサ+kaa
小中断面材で構成されるレシプロカル構造で、これまでに見たこ ともないような木構造を試みるという、圧倒的な独創性を持った 斬新な建築を予定している。
第25回「くまもとアートポリス推進賞」受賞作品
2021 年度は新型コロナウ イルス感染症の流行により、 年ぶりの開催となりました。総数点の応募作品があり、専用住宅、旅館、学校、保育園、博物館など、建築構造も木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造など、規模も大小もさまざま。特徴的なことは「熊本地震」からの復旧・復興に関するものが数多く見られたことです。
一次選考の書類審査から作品が選ばれ、二次選考の現地審査が行われました。最終的には推進賞に5作品、推進賞選賞に は5作品が選ばれました。
この事業は、事業者・設計者・ 施工者の三者を表彰するところに大きな特徴があります。質の高い優れた構造物を作るには、 三者が一体となって協力することが必要だからです。
この「くまもとアートポリス推進賞」の事業は、熊本県が目指す「熊本らしい創造的復興」にも貢献するものであり、今後も継続して行くことが必要であると考えます。
選考委員長 北野 隆

今年度受賞された方々と蒲島郁夫知事を囲んでの授賞式

推進賞 そらいろ保育園
「大きな木の下」のような居場所感を目指したカフェ併保育園。平面 と少しづつ中心に向かって高くなる立面が作り出す外観は、子供たち や地域の人々を包み込む大きな家のように映る。園児やスタッフの人 数に適切に応じた運用をするため、部屋を固定化しすぎずフレキシビ リティを確保したいと条件に応えている。この大きな空間は全体をぐ るりと回遊でき、家具や遊具が可動の仕切りとして加わり、空間の連 続感と保育室の落ち着きを両立させている。
事業主/株式会社ラディカ 設計者/株式会社志垣デザイン店 施 工者/株式会社サンワイーテック 所在地/宇城市松橋町両仲間 3-1 用途/保育園 構造/木造 階数/地上 1 階建 敷地面積 732.01m² 建築面積/ 359.40m² 延べ面積/ 347.40m²

推進賞 下江津の家
この家は新興住宅地にありながら、内部空間と外部空間を緊密に関 係づけるつくりをしている。内部空間は立体的につくられ、道路側に 配置された仕事場は彫り込まれ、道ゆく人との視線の交錯をコントロ ールしている。スキップしながらダイニングキッチンから居間、寝室 へと上るつくりは、前面道路の体面にある公園の、斜め見下ろしの視 線を生み出している。またダイニングキッチンは、前面道路にではな く、隣地の畑とつながっている。
事業主/匿名 設計者/矢橋徹建築設計事務所 施工者/株式会社 st.LAB 所在地/熊本市東区用途/専用住宅 構造/木造 階数/地上 2階建 敷地面積/185.88m² 建築面積/64.59m² 延べ面積/107.35m²
写真/八代写真事務所
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推進賞 HIKE(ハイク)
高瀬川橋沿いに建つ廃院をカフェと宿泊施設にコンバージョン。 人々が集い交流する場所にしたいとのオーナー夫婦の思いから、この 地区の景観などに携わる建築士と共に立案設計の段階から町の人々 との説明会を設け、施工時もワークショップを行うなど、この風土に 寄り添い、景観にも馴染む形を目指している。2 階をカフェに、3 階~ 5 階の宿泊施設は共同のキッチン、トイレ、浴室を設け、元病室だった 各部屋はそれぞれタイプの違う作りに改修された。
事業主/有限会社ライズセットクリエイティブ 設計者/株式会社 村田建築設計所 施工者/有限会社村田工務店 所在地/玉名市秋 丸 415-2 用途/旅館・カフェ 構造/鉄筋コンクリート造 階数/ 地上 5 階建 敷地面積/ 657.26m² 建築面積/ 364.00m² 延べ面積/ 1,276.53m²

推進賞 PLAY FARM・ツリーハウス
熊本地震によって母屋や納屋が倒壊。農家である施主が、農業、自 然、子供を育む環境への思いから、その地に PLAY FARM・ツリーハ ウスが築かれた。ツリーハウスと言っても、一般的な木に寄生、密着 するのでは無く、木々の合間をかい潜るかのように形作って、陣取っ た 2 階建てである。施主による分離発注、セルフビルドによるために、 シンプルで余計なものが無く、ミニマルな潔さと、おおらかで優しい 温もりのあって、大地に根差す木造となった。
事業主/野村 烈 設計者/株式会社志垣デザイン店 有限会社西海 園芸 施工者/野村 烈 魁春園 所在地/宇城市松橋町西下郷 4502 用途/休憩所(集会所) 構造/木造 階数/地上 1 階建 敷地面積/ 366.69m² 建築面積/ 78.82m² 延べ面積/ 78.82m²

推進賞選賞 益城町の事務所
幅約 1.9 mで奥行き約 7 m。木造 2 階建てのノッポな形が目を引く。 建築面積は 4 坪程という。小さな窓がポツリポツリあるが、道路側の壁 には一切ない。「益城町の事務所」は、熊本地震で以前の建物が倒壊した ために建てられた。建物をふわりと覆うように、なお且つ全方向に突き 出すように伸びた屋根デッキは外観のアクセントとなっている。屋根 面の温度上昇の抑制などを図っており、空調の低コスト化も実現した。
事業主/匿名 設計者/一級建築士事務所 Zoological garden 施工者 / Zoological garden 所在地/上益城郡益城町 用途/事務所 構造 /木造 階数/地上 2 階建 敷地面積/ 227.00m² 建築面積/ 14.09m² 延べ面積/ 27.92m²

推進賞 八代市民俗伝統芸能伝承館 (お祭りでんでん館)
この建築の優れているところは配置計画にある。東を八代城址公園 に、北西に裁判所を配する敷地に対して、展示・収蔵棟と会議室棟の 2 棟に分かれ、前者を北西の裁判所に対してL字に曲げて配置し、後者 を東南に置いた。結果、その棟に挟まれるように対角線上の“道”が つくられ、2 棟のうねりながら連なる屋根が “ 街並み ” のデザインとし て設計されている。
事業主/八代市 設計者/平田晃久建築設計事務所 施工者/藤永 組・豊岡組建設工事共同企業体ほか 所在地/八代市西松江城町 1-47 用途/博物館 構造/鉄筋コンクリート造+木造、一部鉄骨造 敷地 面積/ 11,383.50m² 建築面積/ 1907.93m² 延べ面積/ 1722.74m²
写真/DAICI ANO

推進賞選賞 切妻と土間の家
敷地の対角線方向の一番奥に寝室と浴室の箱型の付属屋を置いて、 プライバシーを確保しつつ西日よけの役割を担わせているのは、母屋 の閉じる要件を軽くする賢い選択である。その母屋は細長い登り梁が 垂木のように繁く反復する切妻屋根の下、土間と板間が田んぼの眺め に向き合う開放的なしつらいになっていて、仕事部屋から、近所の子 供の遊び場、家族団欒までが直列し、おおらかで気持ち良い。
事業主/匿名 設計者/林田直樹建築デザイン事務所 施工者/株 式会社ハウジング創 所在地/熊本市南区 用途/専用住宅 構造 /木造 階数/地上 1 階建 敷地面積/ 470.53m² 建築面積/ 178.04 m² 延べ面積/ 144.08m²
写真/イクマ サトシ(TechniStaff)

推進賞選賞 松橋の家
背の高い身廊の低い側廊がまわる、教会堂建築で発達してきたバジ リカ形式に似た構成を持つ住宅である。中央の身廊部には、高窓が回 らされていて、家の中心を明るく照らしている。そこがこの家ではリ ビング、ダイニングになっている。この構成は身廊と側廊の間の主従 関係や補完関係、高/低や中心/周縁などの対比を示しているが、他 の使い方もできそうだ。
事業主/匿名 設計者/中野晋治建築研究室 施工者/山口建設株 式会社 所在地/宇城市松橋町 用途/専用住宅 構造/木造 階 数/地上 1 階建 敷地面積/ 608.61m² 建築面積/ 111.79m² 延べ面 積/ 109.30m²
写真/八代写真事務所

推進賞選賞 地獄温泉 清風荘
熊本地震で大きな被害を受け、大半の建物が倒半壊した。曲水舎は 被災前は食事処だったが、本棚などがあるギャラリーと客室を備えた 建物に生まれ変わった。客室は家族向けや湯治室、1 坪程度のロフト 室がある。本館も古い柱や部材を極力残しており、昔ながらの懐かし さをとどめ、土石流に埋まった石組みの湯船などを再利用して復旧し た「元の湯」とともに伝統と湯治文化の継承を印象づけている。
事業主/有限会社地獄温泉清風荘 設計者/株式会社村田建築設計 所 施工者/東部造園 坂口・熊本利水特定建設工事共同企業体 熊 本利水・三牧建設工事共同企業体 株式会社藤本建設工業 所在地/ 阿蘇郡南阿蘇村大字河陽字三ノ川 2329-1 用途/旅館 構造/木造 +鉄筋コンクリート造 敷地面積/ 1,484m²
写真/Yoshikazu Shiraki

推進賞選賞 南阿蘇村買取型災害公営住宅 長陽西部団地・下西原第2団地
2 住戸が「間守土間」と名付けられた屋根付き外部空間を共有しなが
ら1棟となり、千鳥配置で並ぶ。住戸から見ると玄関が面するポーチ で、雨に濡れずに出入りできる軒下空間である。挨拶が交わされちょ っとした居場所になるきっかけとしてベンチが設置されている。一方、 団地内をめぐる共有通路が貫通しているので、人々が行き交う道の一 部でもある。
事業主/南阿蘇村 設計者/株式会社ライフジャム一級建築士事務 所 株式会社トポスペース建築研究所 施工者/株式会社豊工務店 株式会社グリーン住宅 所在地/長陽西部団地 : 阿蘇郡南阿蘇村大字 河陽 4975 番 下西原第 2 団地 : 阿蘇郡南阿蘇村大字河陽 1932 番 用 途/長屋住宅 構造/木造 階数/地上 1 階建