ライフスタイルマガジン『くまもとのいえ』と連動した、熊本の家づくり情報を網羅したプラットホームです。
建築家、住宅会社の新築からリフォーム、リノベーションまでさまざまな事例をご紹介。
2021/8/9
くまもとで暮らすぜいたく
2021/11/10
「三角西港の家」
(株)坂本達哉建築設計事務所


1972年生まれ。熊本工業大学(現崇城大学)工学部建築学科卒業
西山英夫建築環境研究所を経て2000年坂本達哉建築設計事務所設立
2001年熊本デザイン専門学校非常勤講師
2018年株式会社坂本達哉建築設計事務所設立
【住宅実績】30棟 【設計監理料】施工実費の10%~12%
【受賞歴】2020年第31回くまもと景観賞地域景観賞(fons)、2019年第24回くまもとアートポリス推進賞(fons)、2019年第13回建築九州賞奨励作品(kulos)、2017年第20回木材活用コンクール防災対策賞(kulos)、2015年第11回熊本住宅賞

▶設計のポイント
敷地周辺の海、山、空という豊かな自然を取り込めるよう、おおらかでシンプルに過ごせる平屋を計画。海と平行して架けた屋根が生活空間と風景を結びつける一方で、屋内は床の高さを変えて単調になりがちな平屋にリズムを持たせました。外壁は隣家のデザインを引用した木格子により、景観と馴染むよう配慮しています。
House Data
宇城市 K様邸 家族2人
敷地面積/約255.9坪
延床面積/約86.6坪
工法/木造軸組工法
設計期間/約6ヶ月
工事期間/約6ヶ月
サンセットの名所として知られる三角西港エリア。ウッドデッキに腰掛けて海風と波の音を感じながら眺める絶景は、贅沢の極み
ARCHITECT
坂本 達哉 Tatsuya Sakamoto

事務所は奥行きのある長屋の一室をリフォームしてオフィスとして再利用。壁と天井は自然素材の漆喰塗り。手前が打合せコーナー、奥は模型製作室となっています。
【所在地】〒860-0811 熊本市中央区本荘5-12-7
【TEL・FAX】096-371-9322
【URL】https://ta-fu.net 【E-mail】info@ta-fu.net
株式会社 坂本達哉建築設計事務所
Tatsuya Sakamoto Architect & Associates
光と風、眺望を取り込む気持ちのいい暮らし
明治期に築港された三角西港と情緒ある街並みが広がり、南側に有明海と新一号橋を望む風光明媚な場所。前面道路からはモダンな平屋の室内をうかがえないが、家に足を踏み入れると一転。開放的な空間とテラス越しの絶景に息を飲む。
製材会社を営む施主が坂本さんにリクエストしたのは「海を取り込む」、「木材をふんだんに使う」の2点。そこで、海に沿った横長の敷地を生かそうと主な居住空間を海側へ集約。オーシャンビューが広がる自然とともに生活できるよう設計した。
架構には海に向かって伸びる15mもの梁を並べ、床にはシイやクスなどの地元木材を使用。外壁には塩害対策としてメンテナンスしやすいスギ材を、目隠しとデザイン性を兼ねた木格子には朽ちにくい屋久島の杉を用いるなど、木を熟知する施主のこだわりが詰まっている。
晴れた日はリビングの大開口を全開にして、ゆっくり移ろう景色を眺めながら過ごす。最高の贅沢だ。
自然とともに生きる。海を見渡す癒しの平屋
坂本さんの設計に欠かせないのが、「気持ちのいい」空間づくり。趣味と勉強を兼ねて海外のリゾート地を訪れ、土地ごとの暮らし方を学んできた。「現代の住宅は、土地に建物をポンと持ってくる建て方が多いですが、私の場合は敷地まわりの条件を盛り込み、地域に根ざした建築になればいい。そんな思いで設計しています」。周辺が建物に囲まれている場合、どの向きに部屋を配置し、光や眺望をどう取り込むか。素材選びも環境に合わせて使い分けていく。家は場所によって変化するもの。地域性や景観とのバランス、敷地の条件を生かした建築こそ、強みだ。
ちなみに、坂本さんのもとには「海の家の建築家」と呼んでいいほど、海の眺望を生かしたいとの依頼が多い。海が近いと波の音が聞こえ、丘の上から見下ろす漁り火も美しい。立地ごとに海の生かし方がある。「いつか自分も海が見える家を建てたい」。依頼主と同じ目線に立って、家づくりの夢を叶えている。
条件を最大限生かす、地域に根ざした建築

景観を遮らないようテラスにはワイヤーの手すりを採用。窓側にカウンター席を設け、外を眺めながら読書やお茶を楽しめる

テラスへフラットに繋がるリビングとダイニングキッチンは床の高さに変化をもたせ、海の向こうに一号橋を眺めることができる


深く伸びる軒に沿って設けられたウッドテラス。奥にはレンガ造りのバーベキューコーナーを設置し、晴れた日は魚釣りや屋外BBQを満喫
畳部屋に用いた珪藻土の壁は、海のようなコバルトブルーがアクセントに。和モダンな木格子の引き戸がリビングにしっくり馴染む


キッチンを中心としたダイニングスペース。仲間を集めてホームパーティーを開く機会が多いため、にぎやかに過ごせる作業台を配置した
道路側の塀はメンテナンスを考慮して杉板の差し込み型に。防音と安全対策を兼ねて建物との間にゲスト用の駐車スペースを設けた



現在計画中の海の家のプロジェクトのCGパース。リビング一面のフィックスガラス越しにインフィニティプールと海が繋がり、海外リゾートのよう
景観に馴染む木格子を外壁に採用。屋内の天井と足元からガラス窓越しに灯りがこぼれ、道路側はクローズドながら人の温もりが伝わってくる