ライフスタイルマガジン『くまもとのいえ』と連動した、熊本の家づくり情報を網羅したプラットホームです。
建築家、住宅会社の新築からリフォーム、リノベーションまでさまざまな事例をご紹介。
2021/8/9
くまもとで暮らすぜいたく
「共感」の輪をひろげ、どのような過程で創るか? 建物の在り方も含めてデザインしています。
コミュニティーデザインから うまれた交流拠点
村田さんが受賞した2つの作品は、ある共通点をもつ。一度は役 目を終えた建物が、地域のコミュニ ティー拠点として再生したことだ。
かつて病院だった5階建をリノベーションした『HIKE』は、ホステルやカフェを併設する複合施設。
「地元の魅力を発信し、人が交流で きる拠点を作りたい」と語るオーナー夫妻を応援しようと、村田さんはプロジェクトに参画。しかし、 風情ある高瀬裏川に隣接する建物 は長年廃墟と化し、「景観を損なう 存在」となっていた。そこで地域の 人たちと意見交換会を行い、ワー クショップを重ねていくうちに共感の輪は拡大。笑顔が集う場所へ と生まれ変わった。
一方、熊本地震で大きな被害を受けた『清風荘』に復興支援の段階から関わってきた村田さん。その再建にあたり、江戸時代から続く 湯治場の記憶をいかに繋いでいくかが命題に。再生可能な部材を再 利用しつつ、鉄筋コンクリート構造を用いるなど、災害時の安全面にも配慮した。
「いずれも施主さんや想いに共感した人たちと一緒に創り上げた建物。今回の受賞では、そうした過程 も評価していただけて感謝しています」と、村田さんは笑顔を見せた。
厨房だったスペースは宿泊者用の共有キッチンへとリノベーション
2階カフェは両サイドの外壁を撤去して総ガ ラス張りに。風通りの良い明るい空間へと生まれ変わった
小さな家がすっぽりおさまったファミリールームは子ども たちに人気。日本古来のなぐり加工を施した床が足裏に心地 いい
6タイプ・10室ある宿泊部屋の一つ、ロフト付き ファミリールーム。造作した二段ベッドや壁に用いた無垢材 は調湿や防寒の機能も果たしている
▶設計のポイント
企画設計の段階から意見交換会で 要望やアイデアを募り、解体、塗装、 クロス貼り、ペンキ塗り、ベンチ・ テーブル・カトラリーの制作はワー クショップ参加者の協力によるも の。もともと病院だった間取りを 生かした宿泊フロアは、病室を宿 泊部屋にリノベーション。部屋の 扉を異なる色でペイントし、無垢 材を効果的に用いて温かみのある 空間へと蘇らせました。
■プロフィール
1968年生まれ
明治大学工学部建築学科卒業
建設会社設計部を経て、2003年村田建築設計所を設立
2015年株式会社村田建築設計所を設立
住宅実績/約100棟 設計監理料/総工事費の7%〜15%
ARCHITECT
村田 明彦 Akihiko Murata
株式会社村田建築設計所
建物の設計と同時に、「どのように創るか?」という過程に おける営みを丁寧に紡ぐことを、大切にしています。
【所在地】〒869-0065 玉名市高瀬395
【TEL】0968-57-9858
【FAX】0986-57-9868
【URL】http//arch-mura.com
【Mail】aki@arch-mura.com
▶設計のポイント
個室形式の宿泊施設にリノベーションした「本館」や専用風 呂付きの上質な「離れ」。バックパッカーや湯治客など長期滞在者向けの宿と共有キッチンやライブラリーをまとめた「曲水舎」。災害時にはシェルターとしての役割を担うエントランス棟など安全性を確保しつつ、幅広い客層が利用できる湯治場へと再生しました。
眺めの良い場所に設けた木造平屋の「離れ」が3棟。寝室から広縁へとフラットに繋がり、窓を開放すると南阿蘇の景色がすみずみまで広がる
窓を全面開放すると露天風呂のよ うな開放感を放つ「たまごの湯」。万が一の土砂災害時に備えて RC 造りで新設した
畳の上まで土石流で埋まった本館は建て起こし工事を行い、耐力壁などで補強。以前の材料をできるだけ再利用し、以前の面影を残した